国税当局の常識知らず、競馬の当たり馬券への論外の課税(上)

大阪の競馬好きの人がとんでもないことになっているよ。この人は3年間で28億7千万円の馬券を買い、約30億円の配当金を得たんだ。つまり差し引き1億4千万円を儲けたわけだよ。

彼は全国のレースをとことん研究する。そしてそのデータを駆使して元手の100万円で馬券を買い、その当たり馬券で馬券購入に次々に回していったんだって。すごいね。でも彼はプロのギャンブラーではなく、年収800万円の普通の会社員なんだよ。

ところが税務署がこの人になんと約7億円の課税をしたんだ。一時所得となる競馬収入からは、馬券の購入費は収入から控除できない(当たり馬券の購入費のみOK)から、30億円のほとんどが課税対象になるというんだよ。

1.4億円の儲けに7億円の税の徴収。この無茶苦茶な課税に対して彼は裁判を起こしてる。でも裁判所は役所の言いなりだから、気の毒に、彼は破綻しちゃうんじゃないの。

繰り返すけど、こんな課税は無茶苦茶で全くのおふざけ。消費税等の広範な大増税を前に、これは反税感情を煽るだけだよ。国税も時局認識がないんだね。
ところで一応私も税金屋だから、簡単にしくみを説明しておくよ。

まず所得税はその収入の特色に応じて10種に区分される。そのうちの一時所得というのは、営利を目的とする継続的行為によるものや役務・資産の譲渡対価によるものを除く一時の所得とされている。例を挙げれば福引の当選金、生保の満期金、法人からの贈与(クイズその他の賞金)といったものだよ。

一時所得は、こうした収入から「その収入を得るために支出した金額」を差し引いた額になる。そして課税対象はその所得の2分の1だけとなっている。
でもこの「支出した金額」は、事業所得などでいう必要経費よりも狭い概念とされてるんだ。だからハズレ馬券の購入費はこの「支出した金額」に含まれず、当たり馬券だけしか対象にならないってわけなんだよ。

だけどこの7億円の課税は、誰がどう考えても非常識だね。つまり現実に対応できないような規定の基になっている考え方が、屁理屈・理論倒れなんだよ。
とはいえ、いちいち競馬に関しての税の特則を作っていたんじゃ、税法が複雑になっていけない。だから次のような常識に合致するような運用を考ええるべきだと思うよ。

冷静に考えれば、この人の行為は「営利を目的とする継続的行為」としか思えないよね。つまりこれは事業所得(雑所得)になるはずだよ。であればハズレ馬券の購入費も「必要経費」に含まれる。その結果、所得金額は1.4億円の儲けだけという常識どおりの結果になるんだよ。

要するに「競馬収入は一時所得」は、普通の趣味程度のものを前提にして定められてる。だから今回のようなパソコンを駆使したとんでもない規模のものなんか想定されていないんだね。

でも税務署の中には、自身の成績を考えて税法を杓子定規(さらにはご都合主義的)に運用して、荒っぽい課税をやる奴がいるんだよ。となると税務署も、組織としての士気面からついそれを支持しちゃう。何より裁判所もこれを絶対に勝たせてくれちゃうんだ。

てなわけで近年はイケイケの課税が増えて、税の運用がどんどんおかしくなっている。このケースはその典型。困ったもんだよ。(「下」に続く)