自分の身辺をとくと見直し、使えるものは使おう

死亡保険金の非課税枠を使い切ろう/死亡退職金の非課税率枠も利用できる/自社への貸付金の処理を忘れずに/将来の支出も相続前に行っておく/法定相続人の数を増やす

生命保険の利用

相続後に最も重要となるものは金融資産です。そして生命保険に加入していれば、死亡保険金としてまとまった額が短期間で支給されます。おまけにうまく使えば、かなりの相続税対策にもなります。

死亡保険金には、法定相続人1人当たり500万円が非課税とされています。法定相続人が3人であれば1,500万円までの保険金は課税されないで済むのです。であればこれを使わない手はありません。

しかし今日の高齢者が主に加入している定期付終身保険では、60歳までは手厚い保険金が付されていものの、それを過ぎると保険金は数百万円と一気に下がってしまいます。したがって、現在の70歳以上といった高齢者のほとんどの人は、この程度の保険にしか入っていません。相続人の数が3人の場合では、約 1,000万円の非課税枠が遊んでいることになります。

であれば1,000万円の預金を下ろして、同額の一時払いの保険の終身保険に入ります。これだけで1,000万円の相続財産を減らすことができます。この際利回りなどはどうでもいいでしょう。5年後10年後に、きちんと1,000万円の死亡保険金が支給されればいいわけです。

ただし生命保険は通常、最高で80歳までの人しか保険に入れません。また健康診断の結果で加入できないという問題も考える必要があります。

なおこの非課税枠に関しては、死亡退職金も同様の事情(相続人1人500万円OK)にあります。したがって不動産管理会社といったいわば「節税会社」レベルのものでも、これを使い切るべきです。

つまり、高齢により事実上リタイヤしても、役員の名は残しておきます。そして相続発生の際に、1,500万円といった死亡退職金支給します。この金額が相続税においては非課税となるわけです。

その他の対策

相続開始が近くなってきたら、一度はやっておくべきものとして債権等の見直しがあります。要するに貸金の状況把握です。むろん貸金はれっきとした相続財産だからです。

最も注意すべきは、業績不振の自社への貸金です。自身等が経営している会社が資金不足となれば、当然に個人資金をつぎ込みます。このように自身の会社への貸金の累積が、数千万円に達しているケースは決して少なくありません。とはいえ、会社には返済する力はほとんどありません。実体上この貸金は、ないと同じというより他ありません。

しかし相続税は、この貸金も額面どおりの相続財産とさてしまい、この部分に対し軽く1,000万円以上の相続税が課されかねません。

であれば、こうした返済不能部分に関しては、会社に対して確定日付を付けた書面により債権放棄をしておくことです。こうした手続や、この債権放棄で会社に生じる受贈益に対する課税への対処等は、顧問の税理士さんへご相談下さい。

また、近い将来に支出すべきものは、親の資金で相続開始前に支出しておきたいものです。こうすればそれだけ相続財産が減るからです。

まずは自宅や貸家といった建物の修繕です。必要な修繕は親のお金で生前にしておくべきです。広い敷地の隅には、今後全く使用する当てのない古い物置や離れが残されている例もあります。これらがもう使わないのであれば、この時点で取り壊してしまうべきです。

相続開始後ともなると、土地の売却や物納等が行われます。そしてそれらには土地の測量がつきものです。今日この測量代が意外と高額(下手をすると 1,000万円にもなりかねません)となります。また中には造成や整地を要するものもあります。こうした各種の費用も、しっかり生前に支出しておきたいものです。

養子縁組により法定相続人の人数を増やすことも検討すべきでしょう。相続税額の独特の計算方法とその累進税率によって、法定相続人の増加はかなりの減税効果を生みます。その意味から節税対策規制により人数は大きく制限されていますが、まだ原則として1人、実子がいない場合は2人まで可能です。

さらに孫を養子にし、その孫に大半の財産を相続させることにより、相続税の負担を1世代飛ばしてしまう手法もあります(ただし相続税は2割増しになります)。

ただし養子縁組は、親族関係の身分の変動を伴います。さらには姓を変更しなければならない場合もあります。したがって実施に当たっては、これらへの十分な考慮が必要になりましょう。