依頼者の悩みを取り除く

4人家族の父親に相続が発生しました。両親は約20年前に実家(A地)を出て、年配者向けの土地建物(B地)を購入しています。姉は既に他に嫁いでおり、現在A地には長男家族が住んでいます。

B地の購入に際しては、将来A地を相続する予定の長男が、購入資金のほぼ半分を拠出しています(登記名義も半分)。なおA地は既に父から、相続税対策の意味から妻,長女,長男に1割ずつの贈与がなされています。こうした中、父の死去によりB地を売却し、母は長男宅から「スープの冷めない距離」の賃貸マンションに住むことになりました。

なかなかよく考えられた相続なのですが、依頼主である長男の顔色が今ひとつ冴えません。そこでその点を突っ込んで聞いてみると、次のような話となりました。

「実は自分が住み続けるA地に関して、姉が持っている1割の所有権が気になっている。むろん姉は悪い人間ではないのだが、この1割をどう考えているのかがよく分からない。ずっと先に自分らが死んだ後のことを考えると、これが気になって仕方がない。かといって、今この1割を自分が買い取るというのも、いかにもわざとらしいし・・・」。

よそから見ればどうということもない話のように思えますが、当人としてみれば、つまらないことで姉・弟の関係を崩したくはありません。この長男の気持ちはよく分かります。

そこで一計を案じ次を提案しました。つまり、姉の所有するA地の持ち分と、それに匹敵するB地における長男の持ち分を、B地の売却の前に交換するのです。こうすれば長男は、B地の売却代金は減る代わりにA地から姉の持ち分をなくすることができます。

「成る程、これなら所有関係の合理化という名目で、姉に話を持っていくことができる」。長男は十分納得の上すぐに姉を訪問、この話をまとめてしまいました。姉も「名目的なA地の所有権が、B地の売却代金としてお金になる」と喜んでくれたそうです。そして間もなくこの話が実施に移されました。

考えてみればどうということのない話ですが、明らかに当人らの悩みを解決することができたわけです。税理士はサービス業。依頼者に喜んでいただくのが我々の使命であると考えています。