時価を左右する個別的要因(1)面積

 ここでは、上記算式の「±個別的要因」でいう個別的要因にはどのようなものがあり、それが値段にどの程度の影響与えているかを、各要因ごとにみていきます。

 先に「A地40坪・B地80坪」の設例で、面大減価(面積が増えると単価が下がる)のお話をしました。今度はこのケースで、さらに面積の広い160坪というC地を考えます。

 するとC地は図表4-3のように、真中に私道を造成することにより4区画に分割することになります。

図表4-3: 160坪のC地:位置指定道路による4分割

4分割するためには、私道を造成することになります。位置指定道路の幅は4m(以上)。公道との角部分には所定の角切りも必要です。

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なおここで造成される私道は、所定の要件を満たす「位置指定道路」(図表4-4)でなければなりません。その主なものは、幅員を4m以上にすること、公道との接続部分は一定の「角キリ」を造ること、その他舗装等の整備をすること等です。

図表4-4: 位置指定道路

行政法規もきちんと満たした道路です。幅員は4m。それは奥の車の大きさからもわかります。角切り(すみきり)が大きい点にも注意してください。

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 こうした私道を含む各種の土地利用への規制は、「住みよく災害にも強い国土をつくる」という目的のもとに、建築基準法や都市計画法といった多くの行政法規により行われています。こうした行政法規による規制はさまざまな場面で実施され、それが土地価格に大きな影響を与えています。

 いずれにしても面積の広い土地は、一般の人が購入可能なように細分化するより他ありません。この土地の細分化は、地価の上昇によりもたらされます。したがって地価の高い東京23区等では、1宅地が20坪以下といったミニ開発が行われています。一方、地価が坪10~20万円とそれほど高くない地方都市では、1宅地が60~70坪が標準となっており、細分化はそう進んではいません。

 ところでこうした宅地化して敷地を分割する(これを「開発行為」といいます)対象面積が500m2(約167坪。なお地方都市の場合は1,000m2)以上の場合は、少し話が面倒になります。つまりその場合には行政から「住みよく災害にも強く」を目的とする開発許可を受けなければならないからです。

 最大ポイントはやはり道路です。つまり開発道路の幅員を広め(5~6m)にする、なるべく行き止まり状のものを避ける等です。また開発面積が増えるにつれて、かなりの割合の公園といった緑地の無償提供も求められます。こうして住環境と街の安全が図られるわけです。

 しかしこうした道路等の公共用地が増えてくると、販売することのできる宅地の面積の割合(これを有効宅地化率といいます)が減ってきます。この有効宅地化率は地形にもよりますが、大雑把にいえば300坪(1,000m2)70%見当、1,000坪で65%、1万坪で60%、10万坪で50%といったところでしょう。これらの公共用地の負担はすべて事業者がかぶるわけです。

 また開発用地を購入する開発事業者の負担はこれに止まりません。その膨大な造成費(供給処理施設の配管を含む)やこれらを分譲する際の販管費、土地購入の際の仲介料費や事業費のための借入金利息、さらには適正利益や事業理リスク等々。したがって有効宅地化率にこれらを加えれば、造成後の「標準的な土地」単価を100とした場合にこれらの開発用地の単価を大雑把にいうと、300坪で55~60、1000坪で50、1万坪で35程度。そして10万坪ともなればで20以下となりましょう。

 以上のとおりこの開発行為は、まさに面大減価の実態をまざまざと示しているのです。

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