不要高額評価の背景(1)震え評価

 税務署は、税金の徴収が仕事です。土地の評価が低過ぎると思えば、「この評価はおかしい」と言ってくるでしょう。さらに先方は、税理士の顔色を見ながら「この評価は低いんじゃないですか」などと鎌をかけてくることもありえます。

 評価に自信があればそんな指摘は即座に否定できるでしょう。しかし自信がなければ、「税務署から"評価が低すぎる。おかしい"と言われたらどうしよう」と考えてしまいます。むろん評価を否認され追徴されれば、大切な依頼者の信用を失ってしまいます。

 この不安を取り除くのは簡単です。判断に自信が持てないところは、あらかじめ評価を高くしておけばいいのです。税務署は高すぎる評価に関してはまず絶対にクレームは付けません。こうしておけば御身は安泰。お客の信頼を失うこともありません。

 筆者の場合には、苦手な法人税で「震え会計処理」をやりそうになります。自信がなければつい「無難な処理」で、自身を安全圏におきたくなるからです(苦手なものをいちいち調べるのは苦痛に感じます)。ですから筆者は、不得手な法人税はやらないようにしています。

 しかし評価規定にはかなり幅があり、どう評価するかについて独自の判断を要する部分が少なくありません。おまけにその多くが、その判断しだいで評価額は大きく変わってしまうのです。したがって「震え評価」を乱発されたのでは、納税者は大変なことになってしまいます。

 ある国税のOB税理士がこう言ったそうです。「自分の書いた相続税の申告書は、一度も税務署に否認されたことはない」。もうお分かりと思います。税務署に否認されない申告書を書くのは簡単なのです。この人の申告書は、「震え評価」のオンパレードではないでしょうか。

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