不動産以外の相続対策(1)計画的な生前贈与
不動産以外の対策
贈与税とは
贈与税はズバリ、相続税を取るために作られた税金です。
その昔、戦費調達のために相続税ができました。多くの財産を遺して死ぬと、どっと課税するというものです。であれば「死ぬ前に子に贈与してしまえ」。これは誰でも考えることです。
これをやられたのでは相続税の意味がなくなってしまいます。そこで国税側が、贈与をさせないために、贈与をすると目の玉が飛び出るような高税率で課税することにしたのです。これを称して贈与税は「相続税の補完税」であるといわれています。
したがって、今でこそ基礎控除は110万円になり税率も緩和されていますが、それでも贈与税がかなり高いのは事実です。しかし相続税の節税には贈与は欠かせないのは、昔も今も同じといえましょう。
しかしそうであれば、相続税がかからない大半の人は、無理に子どもに贈与する必要がないという理屈になります。たとえば「子供が4,000万円のマイホームを購入するに際して、親がその子に4割の1,600万円贈与したいが、贈与税が心配」といった話をよく耳にします。確かにこの事実を税務署が知れば、ドカンと課税されるでしょう。
しかしそんな心配をするなら、拠出した4割を持ち分としてマイホームを親子で共有にすればいいように思います。そして親が亡くなれば、その持ち分を子が相続するのです。
さて、課税の対象となる贈与の内容は民法が定めています。民法は贈与を、いわば「あげるよ。ウンもらったよ。」という両者の合意によって成立するとしています。次項で説明するとおり、この点は課税の実務において大きなポイントとなっています。
贈与による対策
贈与は、相続税対策の基本中の基本です。しかしその税率が高いため、基礎控除の110万円の利用を中心として、贈与者の年齢や予想相続税額等をよく検討した上で、最適の贈与計画を立案していく必要があります。
まず相続開始まで10~20年見当の期間が考えられるのであれば、とにかくこれと思う親族に毎年110万円(場合によってはそれ以上)の贈与を行うべきでしょう。たとえば受贈者5人に対して毎年110万円の贈与を10年続けただけで、贈与総額は5,500万円にも達します。まさに「継続は力なり」。根気よく実行したいものです。
相続開始までの期間があまりないのであれば、予想相続税の適用税率をにらみながら、贈与額をアップしていきたい。さらに相続開始1~3年前ともなれば、法定相続人を除外した上で、ドラスチックにやることも必要となります。
ただし贈与にあたっては、これを実施したという証拠を残しておかないと、税務署に否認されるおそれがあります。それには受贈者の預金通帳に贈与者の口座から直接振り込むのが一番です。
特にその振り込み金額が贈与税の基礎控除額である60万円(今では110万円)であれば、ほぼ安心です。相続税の税務調査の場でも、この送金は明らかに贈与税を意識した金額であるとして、贈与がなされたと認定するからです。
ただし先に説明したとおり、贈与には「もらったよ」という意志が必要です。つまり子が何も知らない状況で親が子名義で預金をしたような場合には、原則として贈与にはなりません。つまりその預金は親のもののまま(相続財産)となってしまします。
さらに子供名義の通帳や印鑑を親が管理している場合、まして契約印が親の通帳の印と同じ場合には親のものと判定されます。子への贈与はこの辺(とりわけ後者)が大切です。
なお節税本の中には、111万円を贈与した申告書を提出し、基礎控除を超えた1万円に対しての税額1,000円を納付すべきというものがあります。しかしそのような必要はありません。また毎年継続して110万円を贈与すると、連年贈与となってドカッと課税されるなどと書かれているものもありますが、これも誤りです。理論上そのようなことはありませんし、それは税務調査の場で指摘されたことがないことからも明らかです。
婚姻期間が20年を超える配偶者に対して行う、2,000万円までの居住用不動産の贈与は無税とする、という「贈与税の配偶者控除」の特例はよく知られています。
ただし無税なのは贈与税だけです。つまり贈与で不動産の名義を移せば、登録免許税や不動産取得税という意外に高額の流通税が課されます。さらには多少面倒な贈与税の申告も必要となります。
したがって、たいして相続税がかからない場合、あるいは自宅の土地面積が、先の小規模宅地の特例対象の240m2をかなり上回るものでないような場合は、経費倒れになりかねません。全体像を見据えた上での実施が望まれます。
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