昨日のNHKスペシャル「終戦・なぜ早く決められなかったのか」には本当に驚いたね。陸海軍はソ連が参戦することを知っていたんだって。在英武官が、2月のヤルタ会談でのソ連の参戦密約を軍に報告していたんだ。
それが英国公文書館の資料で初めて明らかになった。歴史家もビックリの情報なんだよ。

 昭和20年当時、日本では「最高戦争指導会議」が開かれていた。構成員は鈴木貫太郎首相、東郷外相、阿南陸相、梅津参謀総長、米内海相、豊田軍令部総長の6人だよ。
 でもこの会議にはソ連参戦の話は全く出てこない。軍部がこれを首相や外務省に知らせなかったからなんだ。

 だから戦況悪化の当時、「敵に一撃を加えた後にソ連に仲介を頼み、有利に講和に持ち込む」なんてノーテンキな路線を決めていた。でも参戦方針のソ連が仲介に乗るはずはないんだよ。

 陸軍は本土決戦をやりたかったから、それに邪魔な情報を隠したらしいね。その一方外務省は、軍部の情報収集力を馬鹿にする一方、自身の情報力に自惚れていた。ヤルタ会談情報すら入手できないにもかかわらずだよ。

 実は会議の6人は、早期講話(終戦)しかないことは十分に承知していた。しかし会議では誰もそれを口に出さない。そんなことを言い出せば責任問題になっちゃう。さらに軍部の主戦派が暴発するかもしれないし、下手をすると軍部や極右辺りから殺されかねない。だから建て前ばかり言うんだ。

 その頃、スイスの海軍武官から、アメリカが講和を求めていると言う情報が入った。実はこれは真実。米国がソ連の勢力拡大を懸念して、日本に多少の譲歩はしても、ソ連の参戦前に終戦に持ち込もうとしていたんだよ。

 だけど海相は交渉失敗の責任を嫌がり、「謀略の疑いがあるから、折衝は外務省に回せ」と逃げちゃう。外務省も海軍情報は当てにならないとしてほぼこれを無視。日本は千載一遇の講和のチャンスを失ったんだ。

 一方梅津参謀長は中国への視察により、本土決戦の主力となるべき精鋭部隊が見る影もないことに気付いた。そしてその状況とともに戦争遂行が困難である旨を、天皇に上奏したんだ。
 驚いた天皇が会議を招集。6人に講和についての意見を聞いた。しかし皆はそれでも本音を出さない。話が進まないんだ。

 最後に、近衛元首相にソ連に向けての講和の特使を頼むことにした。しかし講和条件を決められないままに時間切れとなった。そして密約の日(ドイツ降伏の90日後)である8月9日に、ソ連が満州に攻め込んだんだ。

 これらがきっかけでやっと無条件降伏。だから「どうしてもっと早く終戦ができなかったのか」が、このNスペのテーマだったわけだよ。

 ここで、なぜ国の指導者がこうもだらしないのかを考えてみるよ。

 事の本質は、彼ら全員が陸大や高文等のペーパー試験組の官僚・役人(軍人も所詮は役人)という点だろうね。だから試験の成績だけはトップでも、使命感も根性もない。おまけにもろに無能ときてるんだ。

 まず軍人・役人どもは、トップクラスの試験合格をもって優越した人生を歩む権利が保障されたと考える。だから彼らは、組織を通じてとことんいい思いを追及する権利があると思っているんだ。 
 でも軍人は戦争が終わったのではそれができなくなる。だから終戦などは断固拒否する。そのためには武力をも使いかねない。むろん国民のことなど眼中にない。

 指導者も同類で彼らの発想が分かっているから、その暴発が怖い。むろん使命感も根性もないから、身を犠牲にして「国家・国民のために」といった行動には出ようとしない。不利な情報を隠蔽するのはお茶の子だし、責任だけはとりたくないから会議ではダンマリを決め込む。

 ところで彼らの無能さにはあらためて驚いたね。

 世界の力学を考えればソ連参戦の密約が交わされそうなことは、外務省なら分かりそうなものだね。ところが彼らは最後まで全くこれを考えもしない。ソ連仲介路線一点張りだったんだよ。
 これを報じた武官だって、軍のセクショナリズムは分かっているんだろうから、情報が外務省等に伝わるような工作をしてもいいんじゃないの。

 さらに外務省は、国情の急迫につれ「何とか講和を」と懸命に考えていた。だったら「米ソの緊張関係の狭間を突いて米国に取り入る」ことぐらい考えなさいよ。事実アメリカがそう動いていたんだ。しかし海軍が入手したその動きすらつかめなかった。自身の情報力に自惚れつつ、この無能さにはあきれるより他ないね。

 梅津参謀長も、陸軍の精鋭ぶりを信じていたんだね。だって参謀本部の指示で、既にみんな南方へ送っていたんじゃないの。実態を知らないでよく責任者が務まるね。

 それにしても、その時期を含めソ連が来るってことが分かっていたんだったら、満州の民間人を本国等へ疎開させなきゃ。連中がいかに国民を蔑ろにしていたかの証明だよ。

 いやそれ以前に、密約を承知していたにもかかわらず、陸軍は「参戦はない」って信じていたみたいだね。一体その神経はどうなってんだろう。でソ連が攻めてきたら、民間人を放っぽらかして、陸軍は(それも偉い人順に)我先に逃げちゃったんだ。

 もう切りがないからここでやめるけど、やはり結論は、ペーパー試験組に国を任せるととんでもないことになるってことだね(おまけにこの情報元は英国公文書館だよ。情けない)。

 そしてそれが今も続いているんだ。財政状況等や原発問題を考えるまでもなく、この国がダメなのはそのせいだと確信するしかないね。