政府・法務省は、「災害廃棄物の処理等に係る法的問題に関する検討会議」で、21日から、がれき撤去の指針の検討を始めた。そして「早急にがれき撤去に着手したい」という自治体の要望に応え、23日にも次のような内容の指針をまとめ、自治体に通知する予定であるという。

 すなわち、水没した家具や流れ着いた建物の残骸等は、所有権を放棄した「無価物」として、自治体が敷地に立ち入っての撤去を可とする。
一方、宝石や使用可能な時計等の「有価物」は、遺失物法などに基づき警察に届出て、リスト作成の上持ち主を捜す。

 ただし水に濡れたとはいえ、写真、記念品、仏具等は、人によっては「精神的価値」を有する場合がある。これらを処分できるかどうかの最終判断は、自治体に任せる、というものだ。

 一体何なんだこの指針とやらは。「無価物は撤去OKで有価物は遺失物法による」など、当たり前の話ではないか。その上、どうすべきか難しい物の最終判断は自治体に丸投げするというのだ。
 結局この「偉そうな会議」では、実質的に何も決めていない。イヤそれどころか、後述するように、これは自治体の復旧作業を妨害をしているに等しい。

 まず指摘すべきは、この「偉そうな会議」はなぜ今頃始めたのかという点だ。被災地の状況をテレビ等で一目見れば、「がれき撤去の指針」が重要課題になるであろうことは誰にでも分かる。
 であれば、直ちにこうした検討を始め、各方面とのスリ合わせをした上での結論を、とっくに公表していてしかるべきであろう。

 何より、「有価物は遺失物法による」とするこの指針は論外である。この状況下で、どのように有価物かどうかを判断せよというのか。万一それができたとしも、それらを警察に引き渡すような余裕がなどあるはずがない。

 要するにこの「偉そうな会議」は、「この非常時においても現行法を忠実に守れ」と言っているわけだ。であれば自治体が有価物を処分してしまった場合には、そこがその責任をとらなければならないこととなる。

 これではいちいち有価物かどうかの仕分けをしっかりやらない限り、恐ろしくて「早急ながれき撤去」などできるわけがない。
 ましてやアルバムや仏壇等の処理の判断は自治体任せ。つまり後でトラブルが発生した場合の責任を、すべて自治体に押しつけたわけである。

 今日でも多くの避難所では、未だに物資の不足に苦しんでいる。しかしこれでは、その改善のために最優先すべき道路の復旧工事も手が付けられない。この指針は、被災地復旧の妨害そのものというより他ないのである。

 とはいえ批判ばかりでは気が引ける。そこでこの際「偉そうな会議」になり代わって、国が出すべき本来の「震災がれきの撤去」に関する「指針」を、以下にお示ししておこう。

 「現状では、散乱するがれき等の個々の価値判断は困難。よって道路等の復旧を最優先すべきとする観点から、がれき等はすべて廃棄物として撤去すべし。
これにより発生するであろう財産権の侵害といったクレームは、すべて国が引き受ける。したがって各自治体は、後顧の憂いなく、被災地の復旧に全力を尽くしてほしい」。

 このような指針により、国が力強いバックアップ体制を示してくれるのであれば、自治体や住民はどんなに力づけられることか。そもそも膨大な権限と予算を握る中央省庁は、自治体や地域を背後から支えることが本来の責務なはずである。
 にもかかわらず日頃は威張り散らす一方、いざというときに逃げ回る。これではお話にならない。

 なお先の「指針」に関していえば、確かに財産権の侵害といった側面はあるかも知れない。しかし状況を考えれば、常識的にそんな主張は通らない。法律面でいっても「超法規的措置」とする考え方で押せば、仮に裁判になっても負けるはずがなかろう。
 それでも中には「住民に気の毒」とするケースも生じるかも知れない。その場合には金銭補償で対処すればよい。つまり上記の方針で何の問題もないのである。

 むろんそんなことは、法務省等はとっくに分かっていよう。結局彼らは、クレームを受けた場合に多少ゴチャゴチャするのが面倒なのだ。それがイヤだから、逃げ回っているに過ぎない。要するに彼らは、被災地の苦しみなど全く頭にないのである。

しかしまあ、これが「自分のことしか考えようとしない中央の役人や法律関係者の実態」、と言えばそれまでである。しかし一般の国民のほとんどの人が「なんとか被災地の応援を」と考えている今日、あまりに情けないのである。