この25日、1,2審で懲役4年とされた強姦事件で、最高裁が逆転無罪判決を言い渡した。またまた冤罪の発覚。「冤罪大国日本」の面目躍如である。

この事件は、千葉市内で男性(53)が通行中の女性(18)に、「ついてこないと殺すぞ」と脅して80m離れたビルの屋上踊り場に連れ出し、強姦したというもの(平成18年12月)。女性は「恐怖で頭が真っ白になり、変に逃げたら殺されると思って逃げることができなかった」と訴えている。

一方の男性は、「女性に援助交際を持ちかけたらついてきたが、強姦まではしていない」と一貫してこれを否認。客観的な証拠もなかった。しかし1,2審はこの被害女性の供述を根拠として、懲役4年の実刑判決を出している。

しかし最高裁小法廷は、「被害者の供述は不自然な点があり、被告の犯行と断定するには合理的な疑いが残る」として無罪とした。
最高裁が正しいと認定した被告人の説明は、ほぼ次のようなものであった。

被告人が路上で女性に声をかけ、「(3万円の)報酬の支払いを条件に同意を得て、(中略)手淫をしてもらって射精をした」(判決文より)。そしてその際の精液が女性のコートに付着している。
ただしキャバクラ勤務のこの女性は、事前に入手した紙類の中に3万円はなく、男に騙された形になっている。

おそらくこれを悔しがったのであろう。女性は、同日中に強姦の被害を(ビルの警備員を経由して)警察に訴える。しかし犯人は捕まらなかった。

その1年半後、被告人のこの男は足立区内で同様の行為(報酬で釣った女性にその手で「抜かせ」て、報酬を支払わず逃走。実は彼はこの常習犯である)行ったところ、その女性が警察に被害届を提出。しかしこの件は事件にはならないとして処理されたが、その際の精液のDNAが先の件と一致し、男は先の強姦の件で検挙されるに至った。

事件には次のような経緯もあった。強姦にあったとする女性は、その際に破られたパンストをコンビニのゴミ箱に捨て、そのコンビニから新たに購入したパンストを身につけた。ただし、その時間でのコンビニにはパンストが売れた形跡はあったが、捨てられたパンストはゴミ箱から発見されていない。

また一審段階で、コンビニのレジを調査したところ、パンストのみの購入記録がないことが判明。そこで女性は、パンストだけ買ったとする当初の主張を「何かと一緒に購入したかも知れない」などと供述を変化させている。

いずれにしても、こうした客観的な証拠がない場合には、裁判所はどちらの主張が正しいかを判断することとなる。
しかしこのような場合は従来、「被害者は被告人と利害関係もないし、別に恨みを持っていたわけでもないから、わざわざウソをつく理由がない」として、裁判所はほとんどすべて被害者の主張を受け容れてしまう。まさに「一審有罪率99.9%」が示すとおりなのである。

ところがこの件での最高裁は、まず「被害を裏付ける客観的証拠がないため、被害者の供述の信用性判断は特に慎重に行う必要がある」と指摘する。
その上で、刑事裁判の「疑わしきは被告人の利益に」とする大原則の見地から、犯罪の証明が不十分として無罪判決を出したわけである。

その根拠としては、被害者は逃げずについていき周囲に助けを求めていない。強姦されたとする体勢は不自然で、下腹部に傷もない。破れたので捨てたというストッキングも見つかっていない、等々である。

本件に関しては、最高裁は極めて妥当かつ常識的な判示を行った。大いに歓迎したい。とりわけ「被害を裏付ける客観的な証拠がない場合には、被害者の供述の信用性の判断は特に慎重に」は、今後下級審に大いに参考にしていただきたい。

とはいえ4人の裁判官からなるこの小法廷のうち、検察官出身の1人は反対意見を述べている。その要旨は、「被害女性の言い分が正しい可能性がある」である。
しかし判決は被告人を「白っぽい灰色」としているのであって、「真っ白」などといっているのではない。そして刑事裁判は、「真っ黒」または「真っ黒に近い灰色」以外は無罪にしろと定めているのだ。検察上がりのこの人は、刑事司法の何たるかが分かっていないのである。

それにしても警察・検察は、どうして「被害者」の言い分を鵜呑みにするのだろうか。その当時に、ちょっとコンビニのレジとの矛盾を調べて、「あんたの言ってることは本当なのか。警察を騙すとためにならんぞ」位はやるべきであろう。このように被疑者追及の半分程度の迫力でガツンとやっておけば、こんな狂言などすぐ見破ることができるはずだ。

にもかかわらずノルマ主義の悪弊なのか、警察らはひたすら被害者の言い分のみを聞き、犯罪者を創り出そうとする。それが結果として冤罪であることが分かってもお構いなし。とにかく裁判所の力を借りて起訴・有罪に持ち込もうとするのである。これも「冤罪大国日本」の一風景なのである。