広大地規定の問題点

 ところでこの減額規定は、面大減価を評価に反映させるためのものです。したがって面大減価が生じない特殊な土地には、この規定を適用すべきではありません。この点に関して評価基本通達は、「大規模工業用地とマンション適地を除く」と定めました。

 確かにマンション適地(マンション等の建築が最有効使用である宅地)であれば、敷地いっぱいにマンションを建てることから、分譲宅地のように道路等の公共用地を必要としません。この点は大規模工業用地も同様です。したがってこれらを除外するのは当然のことといえましょう。

 ただし実務上は、「マンション適地に該当するか否か」の判断はかなり困難です。しかしこの線引きが明確に行われないと、評価の現場は大混乱を来します。そこで当局は次のような判断基準を示しました。

 "戸建住宅とマンションが混在している地域(主に容積率200%の地域)といった、この判断が困難な場合には、周辺地域の状況や専門家の意見等から判断して、明らかにマンション適地であると認められる土地を除き、広大地と判断する"。要するに、判断に迷うような場合には「広大地の減額規定を適用してよい」と割り切ったのです。

 この規定はこのあたりまではよくできています。しかしこの先がいけません。まずは評価通達の解説文が具体的に示した、4つの「広大地に該当しない条件の例示」です。

【1】すでに開発を了しているマンション・ビル等の敷地
【2】現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地(例えば、大規模店舗、ファミリーレストラン等)
【3】原則として容積率300%以上の地域に存する土地
【4】公共公益的施設用地の負担がほとんど生じないと認められる土地

このうち【3】と【4】は特に問題はありません。しかし【1】(マンション建築等の開発済み)と【2】(郊外レストラン等現に有効利用中)は、明らかに不合理です。

 そもそもここでの課題は、土地の評価(公開市場で売り出せば、いくらで売れるか)です。土地の利用状況は評価とは関係ありません。

 それは、郊外の広い土地が郊外レストランに利用されていようと未利用であろうと、それは土地の値段には関係ないことを考えればすぐ分かることです。評価対象地に大型の賃貸マンションがあろうがなかろうが、更地価格は変わるはずがないのです(現実には賃貸物件の存在はマイナス)。

 この規定における最大の問題点は事実認定にあります。つまりどのような土地がこの規定を受けることができるのかが極めて曖昧なのです。つまり評価対象地がマンション適地、さらには開発を了している土地等に該当するのかどうかが、実務的に分かりづらいのです。確かに「判断に迷うような場合はマンション適地でないとしてよい」といいます。それでも何をもって「判断に迷う場合」というのかが分かりません。

 さらにこの規定の適用を受けると受けないのでは、「天国と地獄」ともいうべき格差が生じます。つまり下記のA地では、9%減か48%減のどちらかです。

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 その中間ともいうべき有効宅地化率による26%減はもう使うことができません。何より評価対象地が広大地ですから、評価額の総額がほぼ1億円以上とかなり大きくなります。そこにおけるこの適用の有無は、税額にして軽く数千万円の差が生じかねません。

 一方このように判定基準が曖昧な場合には、仕事熱心な税務署員はこの規定の適用をさせない方向の対応をとりたがります。少しでも適用除外すべき要素があれば、否認してくる可能性があるのです。

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