広大地・地主に朗報の新規定

 何度も述べているとおり、住宅地等においては面積が広くなればなるほどその単価は下落する傾向があります。

 ところが相続税評価には、この面大減価という考え方そのものがありませんでした。これに類する規定として奥行価格補正率の規定はありますが、図表5-11のA地(1662.04m2)の補正率をみれば分かるとおり、何らその実態を表していません。怠慢規定の最たるものといってよいでしょう。

図表5-11: 奥行価格補正率表

奥行きが長いほど宅地の評価は低くなります。そこで路線価に本表の補正率を乗じて、奥行価格補正を行います。しかし、普通住宅地区の場合、図表4-2の「A地40坪・B地80坪」で紹介したA地は1,000m2(同約38m)で8%。そしえ、いくら面積が広くとも減額率は20%で打ち止めです。まったく実態を反映していません。

奥行距離/地積区分 普通商業・
併用住宅地区
普通住宅地区 中小工場地区 繁華街地区
4m未満 0.90 0.90 0.85 0.90
4m以上6m未満 0.92 0.92 0.90 0.92
6m以上8m未満 0.95 0.95 0.93 0.95
8m以上10m未満 0.97 0.97 0.95 0.97
10m以上12m未満 0.99 1.00 0.96 0.99
12m以上14m未満 1.00 0.97 1.00
14m以上16m未満 0.98
16m以上20m未満 0.99
20m以上24m未満 1.00
24m以上28m未満 0.99
28m以上32m未満 0.98 0.99
32m以上36m未満 0.99 0.96 0.98
36m以上40m未満 0.98 0.94 0.97
40m以上44m未満 0.97 0.92 0.96
44m以上48m未満 0.96 0.91 0.95
48m以上52m未満 0.95 0.90 0.94
52m以上56m未満 0.94 0.88
56m以上60m未満 0.87 0.93
60m以上64m未満 0.93 0.86
64m以上68m未満 0.85 0.92
68m以上72m未満 0.92 0.84
72m以上76m未満 0.83 0.96 0.91
76m以上80m未満 0.91
80m以上84m未満 0.82 0.93 0.90
84m以上88m未満 0.90
88m以上92m未満 0.81 0.90
92m以上96m未満
96m以上100m未満
100m以上 0.80

 平成6年の大減税策の一環として、やっと面大減価の観点からの広大地評価が新設されました。内容は「開発に許可を要する500m2以上といった広大地は、開発指導要綱に定める公共用地を除いた際の有効宅地化率を広大地補正率とする」というものです。これにより補正率は大まかに拡大され、地主層には大きな朗報となりました。

 とはいえこの規定ですら、実勢価格とはまだかなり乖離しています。造成費や販管費・適正利益等が無視されたままだからです。しかしその後10年を経た平成16年、ついにこれらを的確に考慮した評価基本通達の改正が行われました。

 16年の改正内容を一言でいうと、「従来は有効宅地化率で評価していた広大地補整率を、下記算式により求めた数値に変更する。ただしこの規定を適用した場合には、他の不整形地補正、角地加算、崖地補正といった諸補正率は適用しない」というものです。

  広大地補正率 = 0.6 -(0.05×広大地の面積÷1000m2)

 これによる補正率は、たとえば最小面積の500m2の土地で0.575(つまり減額率は42.5%)にもなります。また1,000m2の面積であれば補正率0.55、2,000m2でちょうど半値(50%)。さらに最大面積とされる5,000m2ならば0.35にもなります(5,000m2以上の場合は一律35%)。ちなみに先のA地では0.517(約48%引き)となります。

 従前の補整率がせいぜい0.7程度であったことを考えれば、他の補整率の適用がなくなったことを考慮しても評価額はさらに2割程度下がります。この大きな減額率は一般に驚きをもって迎えられました。少なくともこれは、面積広大に起因する下落の実態を十分に反映しています。とりあえずこの点は素直に喜んでおきたいと思います。

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