取り返せ!相続税-更正の請求と嘆願

更正の請求

 本書の書名は「取り返せ、相続税」です。そうである以上は「税を減らすことを比喩的に述べた」などといっても、「看板に偽りあり」というお叱りを受けそうな気もします。そこで以下3項目にわたり、正真正銘の「税を取り返す」話をします。

 相続税や所得税といった多くの税は、申告納税方式といって納税者が提出した申告書により税額が確定されます。ですからこれを変更するのは少し面倒です。しかし税額を増やすのであれば「修正申告書」を提出するだけでOKです。

 ところが税額を減らす(つまり税の還付)修正はそうはいきません。いったん確定した税額を減らす以上は、その減額の妥当性を税務署が審査する必要があるというわけです。ですから納税者は、税額の減額を請求する場合には、税務署に「更正の請求」を行う必要があります。そしてこの妥当性が確認されてやっとこれを還付してもらうことになるわけです。

 ところでこの更正の請求は、法定申告期限(相続開始後10ヶ月)から1年以内でなければ行うことはできません。税務署側とすれば(もっといえば財政上)、なるべく早い時期に租税収入を確定させたいということなのでしょう。

 なお「更正の請求」は、納税者の当然の権利です。もし税務署がこれを放置したり妙な理屈で還付を否認した場合には、納税者側はその不当性を審査請求等で争うことができます。ですから税務署側も変なことはできないわけです。

嘆願

 しかし「税金の払い過ぎに気づいた時点がたまたま申告期限1年経過後であれば、還付をあきらめなければならない」というのは釈然としません。人間に誤りはつきものなのです。

 しかし税制には、このような場合の救済策は特に定められていません。そこで納税者は税務署に「税を還付してください」というお願いをすることになります。このお願いを俗に「嘆願」と称しています。ただし嘆願は、更正の請求と違って納税者の権利ではありません。税務署にこれを無視されても、審査請求等の争いを起こすわけにはいきません。ですから納税者は、ひたすら税務署の「お情け」にすがるより他ない、という理屈なのです。

 さらに嘆願申請を行う時機は、無期限ではありません。5年という消滅時効により、税の還付はそれ以降にはすることができないと税法に規定されているからです。つまり、嘆願書は納期限(相続発生日の10ヶ月後)から5年以内(税務署の審査期間を考えれば4年10ヶ月頃)までに提出する必要があるわけです。

 ところで実際に嘆願申請をやってみると、意外にもそのほとんどを受けてくれます。数年前にこれを始めた時に、この還付率に驚いたものです。ただし稀にはゼロ回答もありますし、多くの場合は還付金額を値切ってきます。

 いや実は「還付せよ」という規定もあります。国税通則法第24条は、ほぼ「税務署長は、提出された申告書の記載が税法の規定に従っていなかったときは、その税額等を更正する」と定めています。つまり「税務署が税法規定と違った取り扱いをしていたことに気づいたら、これを修正しなさい」と、真っ当に定めているのです。

 しかしこの規定への国税側の対応は、「頬被り」が実態です。そしてこの規定とは関係なく、税務署の「誠意」(あるいは道義的見地)により還付に応じている、という姿勢をとっています。とはいえこちらとすれば、理由はとにかく返してくれればいいわけです。

「取り返せ相続税」

 さて実際には、過去に申告済みの相続税には、還付請求が可能な事案は山ほどあります。しかも還付金額は数百万円から数千万円と巨額に上ります。まさに「取り返せ、相続税」です。

 「山ほどある」という理由は他でもありません。第6章で詳しく述べるとおり、一般の税理士には土地の評価規定に的確な対応ができていません。したがって力量不足その他により、少なからぬ土地に関して不必要に高い評価を行っているからです。こうした状況は、所得税といった他の税からは考えられません。

 はっきり申し上げます。提出されている地主層の申告書の大半がこれに該当します。その結果かなり余分な税(大雑把にいって税額の10%前後)を払っています。これは還付請求を行えば、かなり戻ってくる可能性があります。そしてその可能性があるかどうかは、提出済みの申告書の控え見ればすぐ分かるのです。

 したがって世の中には、この還付業務を請負い、還付された場合に初めてその何割かの報酬を受け取るという、いわば「嘆願業務」を行っているグループがいくつもあります。これを頼んでも、当初に依頼した税理士にはこの事実が伝わらないこともあって、近年これを依頼する人がかなり増えているようです(なお筆者が親しくしている「相続支援ネット」(03-5413-3255)もこの業務を行っています)。

 いずれにしても還付される可能性があるのであれば、調べてもらう価値は十分ありましょう。まさに「駄目で元々」。もしこうした5年以内の申告事案があるのであれば、軽いノリでやってみてはいかがでしょうか。

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