相続・不動産の森田税務会計事務所 森田義男トランプ氏が米国の時期大統領となった。驚きをもって迎えられた選挙結果の背景には、白人労働者らの強い不満があった。

さて幸福感は、願望・欲望の達成度合いで決まると思う。その達成度合いが高ければ幸福だし、低ければ不幸に感じる。つまり欲望・願望を低く抑えさえれば、少ない享受でも幸せに感じることができる。物質的な豊さは本質的な問題ではないのだ。

それ故、太古の狩猟採取や元禄の頃であっても、人々は相応に幸せだったのではあるまいか。物質的に豊かではない分、欲望も低かったからだ。飢餓や戦争がない限りは、無難な社会であったように思う。

ところが近代に勃興した大量生産を基とする資本主義は、それに見合う大量消費を必要とする。すると消費が一通り行き渡ってしまうと、繁栄が止まってしまう。したがって資本主義は、常に人々の欲望の刺激・増大、さらには消費地域の拡大を貪欲に求め続けるしかない。

近年のIT化・グローバル化は、この資本主義の悪しき特性を地球規模に広めてしまった。
つつましく前時代的な生活を送っていたアフリカ等の人々も、電気、テレビ、車等を目の当たりにすれば誰でも欲しくなる。欲望が一気に吹き出すのである。

資本主義はそうした機会を見逃すはずがない。途上国の低い労賃や資源を当て込んでの海外進出を強化する。この労賃等による購買力は大量消費にもつながる。IT化等は国境をなくし、資本主義を全世界に蔓延させていったのだ。

となると、先進国の労働者は途上国の労働力との競争にさらされる。給料の下落はもちろん、雇用自体も奪われかねない。さらにはソ連の崩壊により資本主義に緊張感がなくなった。それやこれやで、今まで層の厚かった中間層がどんどん没落しているのだ。

途上国の方がより深刻であろう。うまく外資が進出してくればいいが、政情の不安定等の理由で職場が与えられなければどうにもならない。
しかし彼らは、IT化等により光り輝く先進国の商品を見てしまっている。もはや昔の生活はできない。欲望のパンドラの箱は開けられてしまったのである。

自国での将来の暮らしが絶望的であれば、何が何でも先進国へ移民しようと考える。その結果として、既に欧州や米国では新移民があふれている。
中には内戦等による難民もいるだろう。しかし大部分は、豊かさ(欲望の充足)を求める経済難民(移民)のはずなのだ。

欧米の指導者は勘違いしているのではあるまいか。「内戦や経済的特殊要因等が収まれば、難民は減るはず。だからここは人道的見地で乗り切ろう」。
しかし欲望が解き放たれてしまった今日、移民は減るはずがない。このままでは、津波のように押し寄せる移民で、先進国は押しつぶされてしまうだろう。

おまけに途上国の出生率はかなり高い。行き渡りつつある現代医学により幼児の死亡率も急減。欲望と人口の二つの急増は、先進国のみならず地球環境にも強烈なダメージを与えつつある。

さらにそれらは、今日進行しつつある気候を一層変動させる。それは食料や水を欠乏させ、居住空間をも奪う。それがまた移民・難民を一層増加させていく。

先進国としても移民に潰されるわけにはいくまい。トランプ氏はその防止策の象徴として、メキシコ国境に壁を造ると発言。これが移民増大の直接の被害者である低所得者層の絶大な支持につながったのだ。

欧州では移民排斥を掲げる極右政党が急伸している。英国のEU離脱を含め、問題の根っこは皆同じだ。
繰り返したい。今日の移民・難民は、グローバル化以前の「牧歌的な時代」のものとは本質的に異なるのである。

ではどうすべきなのか。ここは荒療治でいくしかない。つまり移民の原則禁止である。国境制限を厳しくし、途上国の人々の欲望を国力に見合う水準に協力に抑え込む。要するに、グローバル化以前の時代に戻すわけだ。

国境制限等は先進国も同様だ。関税を駆使して国内産業を守り、職場を確保するとともに食糧の自給を目指す。多国籍企業には禁止的重税を課す。
その範囲での自由主義経済を推進する一方、累進課税の強化等により格差を減らす。その上で、国民の欲望をその国の経済力に見合う水準に導くのである。

さらに先進国は、連携しつつ途上国に最小限の援助を行う。前提はその国の政権腐敗の徹底排除と、「二人っ子政策」等の出生率低下策の強制導入である。その上で、引き下げた欲望に応じた質素な生活をおくってもらうのである。

「そんなことをすれば経済は成長しない」といった批判がありそうだ。しかしそれは現代資本主義に毒された者のたわごとにすぎない。
目指す社会は「最大多数の最大幸福」。物質的豊かさの追求は、地球を痛めるだけで人が幸せになるとは限らないのだ。

「いったん膨らんだ欲望を減らすことは不可能」。これもたわごとである。「欲しがりません、地球環境が戻るまでは」のスローガンで一致協力すればよい。      これを50年もやれば、世界のGDPは優に10分の1以下。これで地球環境は回復軌道に入るはずだ。

これからの美徳は「消費」ではなく「欲望の削減。目標は、幸福感を維持しつつのGDPの削減なのである。

さて、我が国は規模の大きい先進国では、唯一実質的に移民を排除してきたという希有の国である。
となれば「この国では、移民政策や欲望削減策をどのように行うべきなのか」について考えてみたいと思う。

しかしただでさえ長いこの文章。それはまた別の機会としたい。