いやはや、検察というのはどうにもならない組織ですネ。私もここまでひどいとは思っていませんでしたよ。

まあ聞いて下さい。女子高生の下半身を触ったとして、35才の男性が女子高生に列車内で手をつかまれました。男性は終始これを否認していたのですが、あれよあれよで起訴されました。
であれば裁判は何にも審理しないまま、即「有罪」というのがいつものパターンだったわけです。

ところがこの事件には、科学的捜査が行われていたんですね。それによると、男性の指先等からは、女子高生の着衣と同じ繊維は検出されません。おまけにその下着から出たDNAも一致しませんでした。そして昨日、これらを理由に男性に無罪判決が出されたわけです(6月25日付読売新聞)。むろんこれは真っ当な判決です。

ところがこれについて検察が驚天動地の発言です。「予想外の判決。上級庁と協議し、対応を検討する」。
一体何を協議しようというんですかね。検察の担当者は当然坊主でしょうが、「その上司も丸刈りにさせるかどうか」の協議でもやるんでしょうか。

そもそも毎度この欄で強調していましたけど、検察官から起訴された刑事被告人の有罪率は99.9%と異様な水準です。「なぜそんなに高いのか」の質問に対して、検察側は「われわれは絶対に有罪という事案にしぼって起訴しているから」、というウソ臭いことを言っていました。

そして同じ穴のムジナの司法関係者が、これを「精密司法」とおだてていたわけです。何が「精密司法」だよ。既に冤罪が山ほどあるじゃないの…。むろん「99.9%」は、裁判所と検察とが「馴れ合い裁判」をやっていた証拠以外の何ものでもありません。

ところが裁判員制度の導入で、さすがの裁判所もちっとは考えたみたいです。最高裁は、平成21年4月の防衛医大教授への逆転無罪判決で、「被害者の供述のみの場合の審理は特に慎重に」という、まるで当たり前の指示を出しました。またこれを受けて、警察庁は21年6月に全国の県警本部に対して、科学的捜査の導入を含めまともな捜査をやるように通達しています。
要するに警察等はそれまで、何の調べもやらないまま「この人痴漢です」だけで自白を強要。裁判所は裁判所で、最後まで無罪を訴える人を含めみんな有罪にしていたわけなんです。これが「99.9%」の実態。「精密司法」など笑ってしまいます。

むろんこの件の科学的捜査はこの警察庁の指示によるもの。なにせこの組織はもろに体育会系ですから。
そしてこうした証拠が出た以上は、男性は直ちに無罪放免されるべきでしょう。ましてこの男性は、自白の強要に抗して最後まで無実を訴えていましたのです。それにしてもよく頑張りましたね。
それでも検察はこの男性を起訴しました。警察に気兼ねしたのか、別の真犯人追及が面倒だったのか知りませんが、まるでお話になりません。

おそらく検察等には、「裁判所は検察のいうことなら、今までどおりに何でも聞いてくれるはず」という確信があったんでしょう。しかし信頼感も時によりけり。あんな最高裁判決が出ている以上、下級審もこう判決するより他ないじゃないですか。
検察はなぜそうした状況が読めないんですかね。このKYぶりはあきれるばかり。その上での「予想外の判決。上級庁と協議し、対応を検討する」のコメント。先に「驚天動地」と評した気持ちが分かるでしょう。

「いやはや、検察というのはどうにもならない組織ですネ。私もここまでひどいとは思っていませんでしたよ」。これが本欄の書き出しです。これも分かっていただけますよネ。