またまた妙な事件が起きた。第6管区海上保安本部(6菅)のヘリコプターが瀬戸内海に墜落した事故の話だ。6菅はヘリの飛行目的をまともに語ろうとしなかったが、報道陣の指摘により、これが司法修習生へのデモンストレーション飛行の一環だったことが明らかにされたのだ。
事故の発生は致し方ないとして、この事故の背景には現代の多くの病巣が垣間見える(8月22日付読売新聞記事による)。

その第一は、6菅が組織を上げて「修習生へのデモ飛行」をけんめいに隠蔽しようしたことだ。記者会見は22回にも及び、訂正や撤回を含め説明が二転三転したという。
しかも隠蔽は本部長を含む幹部の決定であったにもかかわらず、記者会見を担当した総務課長は、「修習生への配慮のための自分の判断だった」と言い続けていた。

最後になってやっと会見に表れた本部長は一応頭を下げたものの、「何故ウソをついたのか」とする記者の質問にこう答えている。「分かった事実をすべて公表する必要はない。(公表が)遅れたとの指摘はあるが、特に問題はないと思っている」。
役所のあきれた論理を振り回すこんな男は、懲戒免職にすべきである。前原国交大臣は「厳正に処分する」と述べているが、果たしてどこまでの処分ができるかを注目しておきたい。

問題の第二は、6菅が飛行目的を隠そうとした理由が「検察庁への遠慮」にあるらしい点である。海保の関係者の話では、「デモ飛行の依頼者として、なぜ検察(岡山地検)の名を出したのか」と怒られるのを恐れたという。不可解極まる話である。
いったい国交省所管の海保は、批判されかねない大きなリスクを背負ってまでして、なぜ他省庁である検察にそこまで気を遣うのか。検察庁はそこまでの権力を握っているのか。

問題の第三は、司法研修生がこのような物見遊山をやる必要があるのかという点だ。近年の司法試験合格者の急増により、修習期間が以前の半分である1年に減らされている。そのせいか新任弁護士等の著しいレベルの低下が指摘されている。
であればこんな物見遊山などしていないで、もっと身のある修習を行うべきであろう。

実はこうした行事は毎回行われている。しかもそれらは、一般国民が決して目にすることのできないようなものを対象とする。以前に私も、ある弁護士から修習時にダムの工事現場の生々しい最前線を視察したと話を得々と聞かされたことがある。
要するに最高裁等は、彼らを異例の特別扱いをすることにより、「君たちは選ばれたエリートなんだよ」といった特権意識を植え付けようとしている。
そこで6菅は考えた。「こうした不当ともいうべき意図が世間に知られては、企画者の検察は困るであろう」。そして検察のためにこの意図を必死に隠そうとしたというわけである。

第四に、にもかかわらず読売新聞は社説で検察を擁護する。曰く「デモ飛行が悪いのではない。海保の業務を理解してもらうために、司法修習生などに見学してもらうことは意味がある」。取って付けたような論調である。
冗談ではない。法律実務の習得に向けてやたら忙しい修習生が、なぜ海保の業務を理解しなければならないのか。まして何時間もかけてデモ飛行まで見せる必要がどこにあるのか。これは特殊な意図に基づく物見遊山以外の何ものでもない。

要するに大マスコミも、頼まれてもいないまま検察へのゴマすりにいそしむ。これは検察庁という組織が隠然たる権力を握っている証拠である。こんな国が健全であるはずがない。