施行後1周年の 裁判員制度の発展を願う(3/3)

(2010年05月24日)

裁判員制度施行後1周年を期とする、制度擁護・推進論の三回目です。
一回目には、裁判員制度反対論に次の3とおりの理由が示されていると述べました。
そして今までは、その「Aの主張」への反論・批判を行っていたわけです。
 
Aの主張として「裁判は法律のプロに任せるべき。自分はそんな難しい判断はできない」といった、かなり多くの人の意見。
Bの主張は「この制度は、公判前手続きをはじめ無実の人の弁護を困難にさせ、また市民を冤罪に巻き込むことにもなる」とする刑事訴訟の真の改革を目指す極めて少数の弁護士等によるもの。
Cの主張は「法律判断は一般の人には無理で、司法試験をパスしたわれわれ専門家に任せるべき。そもそも素人に口出しされること自体が愉快ではない」といった法曹界による根強い本音の考えです。

 最初にCの主張について。さすがにこうした主張はあからさまには出てきませんが、大半の「専門家」はこう考えているはずです。そしてこの発想はよく分かります。司法試験の難しさは半端ではありません。この難関試験をクリヤーした以上、専門家としての強いプライドを持つのは当然というべきでしょう。
 しかしその地位はペーパー試験の成績によって得られたものです。となると合格者は一般に、その成績がより優秀な者だけがなることができる裁判官、ましてその裁判官の中での限られた勝者により構成される最高裁には、頭が上がらなくなるのでしょう。

 そして今日の裁判所の恐るべき堕落の元凶は、その最高裁(事務総局)にあります。あらゆる競争を勝ち抜いた超エリートとしておごり高ぶった彼らは、社会正義の実現や真実の発見もものかわ、「自身がいかに優越した心地よい人生をおくるか」を中心の課題と考えているようにすら思えてきます。そして「有罪率99.9%」の強要も、その手段のひとつを構成しているわけです。
 
 法律業界にいる人は、おそらくこうした実態に気づいているでしょう。とはいえ組織に帰属している裁判官や検察官はおいそれと動けません(懲罰人事)。しかし自由業の弁護士であれば、こうしたシステムへの是正に向けての行動は自由にできるはずです。
 しかしそうした動きは全くといっていいほどみられません。確かにごく少数ながら「Bの主張」に勢力を注ぐ立派な弁護士はおられます。しかし果たして「行政訴訟を含む不当なシステム全般を糺すために体を張る」といった人はいるのでしょうか。そしてそうした人による行動・問題提起がないことが、世の中に司法の堕落ぶりを覆い隠しているともいえましょう。
 むろんこうした現状を前に、良心的に悩んでいる弁護士は少なくないと思います。ただしそうした人は「既にガチガチに構築された現体制を、一介の弁護士がどうこうできるものではない」といった無力感に身を委ねてしまっているものと思われます。

いやむしろ多くの人は、難関試験の合格者としての個人的利益の追求に汲々としてようにみえてしまいます。少なくとも利益追求団体ともいうべき弁護士会は、(アリバイ的にはいろいろ言ったりやったりしているようですが)最高裁のペースに乗っているとしか思えません。

 繰り返しますが、今日の当局の捜査方法を含めた刑事司法は、社会通念はもちろん刑法にも明白に抵触しています。しかし「法律と実務は違う」という一声で、違法状態がまかり通っています。
 「法律判断はわれわれ専門家に任せるべき」とおっしゃいますが、あからさまな違法行為に目をつぶるような「専門家」などには任してはいられません。「専門家による談合裁判」などに比べれば、社会通念・一般常識をベースとする裁判の方がはるかに勝るからです。

「素人に口出しされること自体が不愉快」は、法律業界の専門家の99%の人が持つ素朴な感情であろうと思います。超難関試験の合格者というプライドからすればそれは当然であると思います(私だってこの試験に受かれば、そう思うに違いありません)。
ところが現時点では、今までの行きがかり上、裁判所や法務省さらには弁護士会はといった組織は、裁判員制度に賛成している体裁を取っています。しかし構成員個人の本音では廃止したくて仕方ないはずです。おまけに大半の世論もこの制度をかなり迷惑がっています。
したがって何かのきっかけで、裁判員制度が批判を浴びることにでもなれば、一気に廃止にもっていかれかねません。

刑事司法の命綱ともいうべきこの裁判員制度は、実質的には政治家のリードにより創設されました。ところがその政治の世界も油断できません。つまり政治家の中には数多く弁護士出身がいます(現在の法務大臣も弁護士です)。となればこうした司法関係は、弁護士等の法律の専門家が担当することになりましょう。そして当然ながら、彼らも先の素朴な感情を持っているはずです。
その意味から裁判員制度は、何かの拍子に廃止されてしまうような強い危惧を持ちます。ですからわたしは、本欄等でけんめいにこの制度の擁護・推進論を展開しているわけです。

 さてついつい力が入って、話が長くなってしまいました。したがって「Bの主張」については、次回の番外編(いわば4/3)に回させていただくこととします。

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