不当極まる弁護士の対応

(2010年06月08日)

6月2日の読売新聞は、過大報酬を請求した弁護士を横浜弁護士会が処分したことを報じています。しかしその実態は「横領」。過大報酬請求といった生やさしい話ではないように思われます。

請求の内容は、自動車メーカーに対する損害賠償請求訴訟の弁護士報酬。大型トレーラーから外れたタイヤの直撃による死亡事故についてのものです。この弁護士は、支払われた賠償金等の670万円全額を、報酬として取り上げてしまったというのです。
 むろんこの弁護士は着手金もしっかり受け取っているはずです。その上で遺族が受け取るべき賠償金のすべてをすべてむしり取る。まさに詐欺・横領以外の何ものでもありません。

 このデタラメをやった弁護士は、「この報酬額は、ある計算式で算出しただけのもの」と、悪びれた様子もありません。弁護士会の業務停止6ヶ月という懲戒処分ですら、これを不当として審査請求を申し立てています。

 この種の問題はかなり多発していると思われます(泣き寝入事案は山ほどあるでしょう)。そしてその最大の原因が、訴訟に関係する金銭を、すべて弁護士が代理受領する点ではないでしょうか。
 この件も、弁護士の口座に入金された賠償金の670万円を、弁護士が屁理屈を付けて返さなかっただけの話。この670万円が原告に直接支払われていれば問題は生じなかったはずです。弁護士が無茶な要求をしてきたとしても、突っぱねればいいからです。

 この代理受領は、弁護士業界の慣行のようです。おそらく弁護士会等が作成している依頼者との代理契約書の標準フォームに、代理受領する旨の条項が当然のように挿入されているのでしょう。

 しかしある意味でこの代理受領は、弁護士にとっても不幸な条項ではないでしょうか。なにせ自分名義の預金通帳に他人の大金が振り込まれてくるのです。凡人であれば、ついその大金に手を付けたくなってしまうでしょう。
 もともと理屈を付けるのは得意です。となれば何やかにや理由を付けて返さなければいいわけです。依頼者がいくら悔しがっても、まず弁護士相手に裁判を起こすとは考えられません。仮にそうなっても、裁判官はおそらく弁護士の肩を持ってくれるだろうとさえ考えます。

 かといって最初から横領を企図する人はほとんどいないでしょう。しかし弁護士には金儲けの話もいろいろ入ってきます。となれば「少しの間こうした預かり金を投入・運用すれば...」などと考えても不思議ではありません。
 うまい話はリスクが付きもの。下手をすれば元本まで失うことになりかねません。となればお金に窮してきます。この資金繰りが苦しいときに、また大金が振り込まれてくるわけです。これを「猫に鰹節」と評するのは言いすぎでしょうか。

 「弁護士は人格的に高潔からそのような心配は無用」、という反論が聞こえてきそうです。
しかし恐縮ながら弁護士が高潔とは決まっていません。確かに弁護士は超難関な試験の合格者です。しかしそれは高潔であるかどうかと全く関係ありません。いろいろの場で「高潔であれ」と諭されているのでしょうが、そんな簡単な話ではありません。

推測するに、代理受領の条項は「弁護士は高潔である」という架空の事実を前提に定められているのでしょう。そしてそれが依頼者と弁護士の双方を不幸にしているように思います。
はっきりいって、依頼者からすれば代理受領など無礼千万な規定です(おそらく弁護士は、成功報酬を請求する心理的負担から逃れたいのでしょう)。これは常識にも外れています。 
代理受領方式は、さしたる必要性のないまま、大金を無担保・無保証で弁護士に預けることを意味します。これは不自然ですしそもそも危なくていけません。この代理受領方式はやめるべきであると思います。

ところで「横領」された670万円は、「被害者」に返還されるのでしょうか。しかしどうやら弁護士会は処分をしただけで、返還を強制するわけではなさそうです。この件に限らず、弁護士が大金を横領したまま破綻する(逃げてしまう)、というケースも少なからずあります。このような場合も被害者は泣き寝入りとなってしまいます。

そうであれば、弁護士会は弁護士が起こした不祥事から依頼者を守るための、損害保険制度を作っていただきたく思います。むろん強制加入です。何より今日、不祥事を誘引するともいうべき代理受領方式が行われています。被害者を泣き寝入り状態に放置していいとはとても思えません。

弁護士法には、弁護士の使命は「社会正義の実現」であると定めています。それには「隗より始めよ」。その意味から、代理受領方式の廃止と依頼者のための損害保険制度の創設をお願いするしだいです。
以 上

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