見識を疑う、メディアによる検察OBの濫用

(2010年01月19日)

今、土地購入をめぐる政治資金規正法がらみの問題等で、小沢民主党幹事長が追い込まれています。この1月19日の大新聞では、ついに小沢氏が、東京地検特捜部の事情聴取に応じる意向を示しているとの報道がなされています。
とはいえ小沢氏は、師と仰ぐ田中元首相らの政治生命を絶った検察庁やその手法に対して、強い敵愾心を持っているようです。したがって両者の争いが今後どのように展開していくかは、全く予断を許しません。

 もっとも私がこの問題自体を論じるのは、やや荷が重すぎます。ここで述べたいのはこの点ではなく、標題にも示しましたように、この問題についてのメディアの対応への疑問・批判です。

 テレビの報道番組の多くは、やたら検察0Bをゲストによび、この問題に関しての意見を求めています。それが「検察による家宅捜索や秘書らの逮捕が、どのような発想によるものであるか」といったこと等に関しての、検察の立場からの説明であれば話は分かります。
しかしそうではありません。彼らに対して、中立的な法律の専門家としての考えを問うているのです。

 しかし長年検察庁に在籍していた彼らが、検察にとって不都合なことを言うはずがありません(ごく一部に例外あり)。多少は軽い問題点を指摘すること等により中立性を装ったりしますが、最終的には「検察庁の方針は正しい」という結論を導きます。
 仮に、本音では「明らかに検察のやり過ぎ」と思っても、それを言ったら検察一家から村八分になりかねません。逆にこうしたテレビ出演で、検察の立場をしっかり守る発言をすれば、検察仲間における地位が高まるわけです。

 例え話です。いまA国とB国で、ある島の領土・帰属をめぐって争っています。そして第三国のメディアが、「客観的にこの島がどちらに帰属するか」を検討するとしましょう。つまり今回の話は、この領土問題に関して、A国の国民を解説者に呼んできて意見を聞いているようなものです。
であればこの人は、「A国の領土である」というはずです。「いやB国の領土である」などと言おうものなら、国中から袋だたきにされるでしょう。意見を聞くなら、少なくともC国といった両国に利害関係のない国の人でなければなりません。

 こんな当たり前のことは、メディア関係者なら分かっているはずです。であればどうしてテレビ等は、客観的な立場から発言できる専門家を呼ばないのでしょうか。たとえば一般の(つまり役所の0Bではない)弁護士、この分野に強い学者や評論家等々です。
仮に検察OBを呼ぶのであれば、日頃から検察庁に批判的は考えを持っている人(鈴木宗男議員ではやり過ぎ?)にも、対等に発言の場を確保させなければなりません。現在のやり方は、あまりに不公平というより他ないのです。

 おそらくメディアは、こうした人との人脈がないのかもしれません。確かに、弁護士や学者等でも、しっかりした意見を言うことのできる人はかなり限られているように思います。
 しかしそうだからこそ、日頃からこうした人を探しておくといった活動が必要となります。そうした姿勢さえ確立してあれば、その作業はそう難しいことではないはずです。少数でも真の実力者さえ探せば、次にその人に紹介してもらえばいいからです。そしてそれらの人との意見交換等によりその人物を見抜きます。こうした活動は、メディア人の大きなレベルアップにもつながります。

 しかしこうした地道な活動がなされているようには思えません。したがって公共の電波を使って、「検察の行動の是非を検察OBに聞く」といった不見識極まることを平気でやるのでしょう。さらにいえばその底には、根深い権力への迎合体質までが垣間見えます。
いうまでもなく、これは許されざる世論の誘導です。これでは検察に攻められている側は、たまったものではないでしょう。
 
いやここまで書いて湧いてきたのは、一体マスコミ関係者は、これが「どれほど罪深い行為であるか」について、あまり理解が及んでいないのではないのか、という疑念です(よもや「役所を退職したのだから公平な発言をするはず」、とまでは思っていないと思いますが...)。
おそらく、「近年の番組制作料の削減によって手間を掛けられない」とか、「やたら忙しい」や「手っ取り早い視聴率アップが求められている」といった、さまざまな事情も介在しているのでしょう。

しかし仮にそうであるとしても、メディアの社会的責任を考えると、以上述べた状況はとても許されるものではありません。
ここは関係者に猛省を促すとともに、その一大奮起を期待しておくこととします。

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